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創作小説と、「オペラ座の怪人」二次創作小説を載せているブログです ※「Menu」または小説本編をご覧になるには、下へスクロール
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 神田千歳(かんだ ちとせ)が目を覚ますと、そこは寮の自分の部屋だった。

「あ、おはよう、千歳。」

ベットのわきには千歳の同級生で親友の、井田恵(いだ めぐみ)が座っていた。
かのマダム井田の妹である。

「恵…今、何時?」

「7時。あれから2時間、ぐっすりだったわね。」

窓の外はすっかり暗くなっていた。
千歳は寝起きの朦朧とした意識の中で2時間前を思い出そうとした。

―学校が終わって、部活に行って、稽古があって、加代子先輩が泣いて…

「ああああああっ!!!」

「どうしたの、千歳!?」

千歳は突然大声で叫びながら、がばっと上半身を起こした。
恵が驚いて千歳の顔を覗く。

「だ、大丈夫?」

千歳はため息をついて、頭を抱えた。

「恵、私、バカなことしたかも…。」

「まあ、突然鼻血出して倒れたことはびっくりしたけど、別にバカなこととは言えないわよ。」

「そうじゃなくって、」

そして、千歳は恵の方に向き直った。

「恵、あの後どうなったの…?」

「な、何が?」

恵は怪訝そうな顔で千歳に尋ね返した。
すると、千歳は急に涙目になって恵の肩をつかみ、ぐらぐらと揺らし始め、

「知ってるくせにっ!私がなんで倒れたのか知ってるくせにっ!!
 あーーーーっっ私のバカっ!」

と、わめいた。恵は首をがくんがくんと揺らされながら、

「ちょ、落ち着い…て、千歳っ…てば!」

と必死に止めるものの、千歳にはまったく届いていない。
千歳は早口で喋り続ける。

「あんなに間近であの二人のやりとり見たのはじめてだったのに。
 あんなせっかくのチャンスを自分から逃すなんてやっぱり私バカだわ…。」

そんな千歳をひいた目で見つめる恵はため息をついて、
「心配したことを後悔させないでよ…。」
と呟いた。千歳が勢いよく振り向く。

「ちょっと…恵にはどうしてこの感動がわかんないの!?」

「分かるわけないでしょ!私は腐女子じゃないしっ」

「この学校の腐女子のトップ、人呼んで『腐女王』の私と親友のくせに!」

「普通レベルも分かんないのに女王レベルに共感できるわけないでしょ!」

「…え、今、私ほめられてる?」

「ほめてないからーっ」

恵が投げたクッションは見事に千歳の顔面ド真ん中に命中した。
鼻をさすりながら千歳が呟く。

「ああ…ペルシアの君と仮面伯爵の愛のロマンスが電柱の陰からではなく、あんなにも堂々と見れたのに…。」

「ツッコミどころが多すぎるんですが…。」

「彼らを追って早五年…誰よりも彼らの愛を知っているはずなのに!!」

「愛じゃないでしょ。」

「分かってないわね、愛以外の何物でもないわよ。」

その時、部屋をノックする音とともにマダム井田こと井田真理が入ってきた。
千歳に体調を尋ねると、恵の隣に腰掛けて優しい笑顔で話し始めた。

「それにしても…あなた…なんてバカなのかしら。」

千歳は顔をひきつらせて固まった。
真理は相変わらず笑顔で続ける

「突然鼻血を出したかと思えばこの忙しい時期に部活2時間の練習を無駄にするですって?本当になんてバカなのかしらね。あら、どうしたの?別に怒ってないわよ?それに、あなたそれでも女王なの?あんな言い合い、私が昇降口から講堂まで連れてくるまでずっとしてたわよ。最初から聞いてもないのにどうして、」

「ちょ、ちょっとお姉ちゃんっストップ!千歳が危ないからっ」

恵が冷や汗をかきながら真理を止めた。
千歳が青い顔でがくがくと震えている。

「あら、どうしたの、千歳?」

千歳はひきつった顔で真理に向き合う。

「ま、真理先輩、私だって伊達に女王と呼ばれてるわけではないんです!
…毎朝2人の登校を電柱の陰から追跡しては観察し、女子棟と男子棟の間の壁によじ登っては休み時間を観察し、最終的にはペルシアの君と同室のラウルの制服にボイスレコーダーを…
というように、私だって頑張ってるんです!!
え、いえ、ストーカーじゃないです…私は私なりに頑張ってるんです!!」

最後にさわやかな顔でガッツポーズを決めた千歳に井田姉妹はドン引いていた。

そして、千歳は息切れしながら輝く笑顔で、
「というわけで先輩、くわしく話を聞かせてください!」
と鼻血を流しながら叫んだ。


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