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創作小説と、「オペラ座の怪人」二次創作小説を載せているブログです ※「Menu」または小説本編をご覧になるには、下へスクロール
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 私が最後に彼女の家を訪れたのは、2年前だった。
それは喜ばしい訪問ではなかったが妙に彼女と話に花が咲いた覚えがある。
彼女に会うことが5年ぶりであったからかもしれない。

 彼女は女性にしては長身であり、無駄の無い、すっきりとした身体つきをしていた。
そして色が白く、その分黒い髪と濃い紫色の縁取りメガネが浮き上がっていた。
女性として魅力があると思うことは出来ない人だったが、
人間としてとても魅力的であり、温厚な性格で平和主義者だった。

 だからこそ、どうして彼女があんなに物騒な仕事をしているのかが不思議でもあった。
とはいえ私が彼女に出会ったのは、彼女がその仕事をしていたからである。
なおも不思議なのは、彼女の仕事振りは天下一品だったことだ。
動きの一つ一つに無駄がない。
私は、これがとてつもなく美しい儀式が行われているように思えてならなかったのだ。

 彼女は一人でいる時、エアコンは付けない主義だった。
私が訪問した3回ともに、嫌そうな顔をして私のためにエアコンを付けてくれた。
思えば、どれも真夏のど真ん中だった。
彼女の住んでいる古いアパートは隣のビルがついに壊されたせいで、
直射日光の餌食であったから、部屋の中はサウナ状態だったと思う。
それでも彼女が窓を全開にして、自然の風だけで生活していたのは、何故だったのだろう。
彼女が自然と一体化していると考えても今はなんの違和感もない。
きっとそうだったのだ。彼女がそこに存在していたのと同じくらい、当たり前のことだったのだ。

 彼女は、人をよく観ていた。
一度、私が離婚をしたことをぴたりと言い当てたことがある。
そして彼女は私を叱ったのだ。
彼女はまさに、自分に正直に生きていた。嘘はなかった。
嘘をつくならば、秘密にした。
そんな彼女と話していると、こちらも嘘がつけなくなる。
言いたくないなら、嘘をつかずに、黙秘すればいいんです。
彼女が私に幾度か言った言葉である。

彼女は今、どうしているだろう。
どこにいるのだろう。
私は時々、こういう風に突然彼女に会いたくなる。

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