創作小説と、「オペラ座の怪人」二次創作小説を載せているブログです
※「Menu」または小説本編をご覧になるには、下へスクロール
それを見つけた瞬間、私は自分の体が歓喜で染まるのを感じた。
今まで決して見つけることができなかった「Fa」が、今、私の目の前にある。
こんなに近くにいたのに、どうして気づかなかったのだろう。
でも、見つけた以上、そんなことはもうどうでも良かった。
私はそれの全体を改めて眺めた。上から下へ、じっくりと、ゆっくりと。
思わず笑みがこぼれてしまう。
「Fa」に釘付けだった。
そして、その純粋な喜びは次なる欲をうんだ。
触れてみたい
その欲は愛情に近いものであった。子供を抱きしめる親の心情だ。
私にはもはや愛しい存在になりつつあった。自分でも分からないほどに。
そしてそれに手を伸ばしてみた。
だが、実際に指に感じたのは想像していた柔らかいものではなく、固いガラスであった。
私と「Fa」の間には確かに、物理的なガラスの壁があった。
私はふと思う。
神はどうにかして私と「Fa」を離しておきたいと考えているようだ、と。
生まれた時には私のそばにはもういなかった「Fa」。どうしてこんな運命なのだろうか。
そこで私はいい例えを思いついた。
きっと私が「Fa」を得る事は、原罪なのだ。
これはなかなかいい考えだと思う。
私はガラスに限りなく近づき、「Fa」をじっと覗き込んだ。
ツンと鼻をつく刺激臭も合わさって、甘美な喜びに眩暈がする。
一種の優越感をも感じていた。
これは、勝利かもしれない。
その理由はひとつで、「私はイヴではない」ということだ。
私にヘビはいらない。それだけ。
エデンを追放されたって構わない。
私が赤い実を自分の意思で手に取ったら、神はなんと言うだろう?
目次
PR
この記事にコメントする