創作小説と、「オペラ座の怪人」二次創作小説を載せているブログです
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電話が鳴った。
知らない男からの電話だった。
「…上田、さんですか?」
私はそうだ、と言った。
すると男は電話の向こうで、
「良かった本当だ。」
と呟いた。
そして荒い呼吸で、良かった、ありがとうございますと、何度も何度も私に言った。
私は不思議な感覚に陥っていた。
名乗りもしない知らない男になんども礼を述べられるのは初めてであったから。
一瞬の沈黙の後、私はやっと男に名を尋ねた。
「申し遅れました、私、渡辺です。」
渡辺はとても腰の低い男であるようだった。
あまりに丁寧に、遠まわしにものを言うものだから、私は危うく本題を聞き逃す所だった。
「…秋成が死にました。」
3度目、やっと渡辺ははっきりと事態を伝えた。
私はそれでも理解に一瞬の間を要した。
秋成とは一体誰だっただろうか…?
それでも渡辺は私に
「秋成のメモにはあなたに来てもらうように書いてあるのです。」
と言い張った。
私は今なら詐欺に引っかかっても良い気がして、
「秋成」の葬儀に行く事となった。
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