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創作小説と、「オペラ座の怪人」二次創作小説を載せているブログです ※「Menu」または小説本編をご覧になるには、下へスクロール
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「創作のお話じゃないのぉ!?超つまんなーい。」

ダロガと陸は机の下で拳を握り締めた。

4、プリマドンナ

クラスで役割を決めた放課後、女子クラスの代表者と話し合いが行われた。

話し合いは、女子校舎と男子校舎の境にある事務棟の一室で行われ、
C組からは製作総指揮のダロガと、
副リーダーの満田
音楽美術監督の陸、
予算などのコストパフォーマンスを主に担当する会計班班長の安藤、
舞台の照明、音声などの裏方を取り仕切る舞台班班長の武田、
オーケストラの指揮者の三浦と、
男子コンマスの矢野、
脚本班の班長の巣鴨
の計8人が出席した。

しかし、女子は、というと…

「あの、聞いてもいいですか…」
「なんでしょう?」
「なんで、女子は全員いるんですか…?」

40人近い女子と向き合って座らせられた8人は、半分怯えていた。
ダロガは思わず、3組の学級委員の井田に尋ねたのだった。

しかし、答えたのは井田ではなく、井田の隣にいる女子生徒だった。
「決まってるじゃない。係の分担がまだできてないのよ。」
「はぁ…。」

その女子生徒は髪の毛先ををしきりにいじっている。
ダロガは、その女子生徒を以前どこかで見たように感じた。
目が大きく、まつ毛は長い。鼻はすらりと高い。
肌は白く、顔はとても小さい。
長い髪もつやがあり、きちんと整えられているのがわかる。

一見美人なのだが…なにかが違う。

男子がどうしたものかと黙っていると、その女子生徒が
「早く始めてよ。私だって暇じゃないのよ。」
と促した。

井田が仕切る。
「…とりあえず、こちらはまったく決まっていない状態なので、
 C組で何が決まったのかを聞きたいんですが。」

ダロガは「そうですね…。」と言って、話し始めた。
「とりあえず、代表者が今回参加してるのでその紹介から。
 僕が製作総指揮を務めます。で、隣が…」

ダロガは一人ずつ紹介していった。
そして、4人目に差し掛かったところで、例の女子生徒が割り込んだ。

「もう、そんなのどうでもいいじゃん。早く終わらせてよ!」

4人目の男子、安藤はその剣幕に怯えて顔をひきつらせた。
小柄な体はさらに小さく見える。よほど怖いのか、天然パーマが小刻みに揺れている。
それは、井田と、その女子生徒の後ろに座る何人もの女子も同じだった。

ダロガはいらいらしている女子生徒の顔をしばし見つめた後、
発言を完全に無視して紹介を続けた。
「こちらが、会計班班長の安藤君です。」

「ちょっと!」
女子生徒はさっきよりもヒステリックにダロガを止めた。
しかしダロガは落ち着いている。
「なんですか?」

「聞こえなかった?それ、その紹介ってやつを飛ばしてよ。」

「あと4人なんだし、いいでしょう。」

「時間の無駄ってわかんないの?」

「あえて言うなら、あなたとのやり取りが時間の無駄です。止めないでください。」

教室内の人間が一斉にダロガを見た。

((こいつ…、何者!?))

そんな空気が女子の間で広がり、

((ナイスだけど、言いすぎだろ…!!))

という男子7人の顔がダロガを見ていた。
陸でさえも、どん引いていた。

一方の例の女子生徒は、怒りで歪んだ顔をまっすぐダロガに向けていた。
言葉にならない怒りを絵にかいたような様子だった。

ダロガは涼しい顔で8人の紹介を終えた。
「では、本題に移ります。」
ここで例の女子生徒がわざと大きくため息をついたが、
ダロガはまったく気にしなかった。

「…と、いうわけなんですが、どうでしょう。」
ダロガがひとしきり説明し終わった後、女子たちはざわめいて議論し始めた。
賛否両論。
しかし、圧倒的に賛成の方向に傾いてはいた。
そして、ダロガが井田に多数決をとることを提案しようとした時、

「創作のお話じゃないのぉ!?超つまんなーい。」

甲高い声が室内に響いた。
女子たちは一斉に黙った。男子8人は驚いて、声の主、例の女子生徒を見た。
例の女子生徒は心底つまらなそうに続ける。

「原作探すって何?そんなのどうせありきたりの話になっちゃうじゃん。
 言っとくけど、歌劇部ってスタンダードなお話はたいてい公演してんの。
 二番煎じの劇なんてお断りだから。
 私はやったことのない主役がやりたいの!
 話の内容ぐらい自分たちで作ってよ!!
 創作の話じゃなかったら、私主役やんないから。」

教室中が静まり返った。
女子たちは、お互い顔を見合わせて、そわそわしている。
井田は「また始まった。」とでも言うような顔をしている。

一方男子は、口をポカンとあけて驚きを隠せずにいた。
満田と安藤は焦るようにお互いの顔を見ている。
どうやら、彼女のことを知っているようだ。

しかし、ダロガと陸は、怒りで拳を握りしめていた。
理性を保とうと必死である。

そして、教室中の目は(例の女子生徒を除いて)ダロガを見ていた。
さっきのように、何かを言え、とでも頼むように。
ダロガはその空気を察して口を開いた。

しかし、声を先に発したのは陸だった。

「別に、あなたが主役をしなくてもいいですけど?」

笑顔の陸に、今度は、ダロガがどん引く番だった。

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